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企業の声

デザイン投資の価値を実感できた ― ALL STAR SAAS FUND

ALLSTAR SAAS FUND 前田ヒロ 氏 /小林千尋 氏

#VC#空間デザイン#インタビュー
投稿日2024年02月28日
更新日2024年08月16日

オプサーユーザーの企業へ、利用した感想やより良い活用法を伺うインタビューシリーズ。

今回は、クラウドサービスを活用してソフトウェアを提供する「SaaS(※1)」企業を専門的に投資・支援するVC(※2)の「ALL STAR SAAS FUND」が2023年11月9日に開催したカンファレンスをフィーチャー。

all star saas conference2023カンファレンスホール

ALL STAR SAAS FUNDを代表として投資事業を務める前田ヒロさんと、同VCのブランディングやマーケティングのトップである小林千尋さん、そしてオプサー登録クリエイターでハイフン(HYPHEN)の代表・原健三さんを招きました。
聞き手は、オプサーを運営する ヒューリズムでCEOを務める多湖大師です。

大規模オフラインイベント「ALL STAR SAAS CONFERENCE 2023」においては、ウェブサイトや会場設計・意匠に至るまで、リアル/ウェブを横断して、クリエイティブ全般をオプサーを通じてマッチングしたHYPHENと推進。
今回の実施を踏まえ、本業である投資事業の観点から「デザインへの投資価値」をテーマに、その有用性や重要性を伺いました。

※1 SaaS:サース。“Software as a Service”の略
※2 VC:ベンチャーキャピタル。ベンチャー企業やスタートアップに出資する投資会社

ALLSTAR SAAS FUND Managing Partner 前田ヒロ 氏 ALLSTAR SAAS FUND Director of Brand & Marketing 小林千尋 氏 株式会社ハイフン 代表 原健三 氏

ALLSTAR SAAS FUND Managing Partner 前田ヒロ 氏
ALLSTAR SAAS FUND Director of Brand & Marketing 小林千尋 氏
株式会社ハイフン 代表 原健三 氏

既存のカンファレンスにあるイメージを壊したかった

ALLSTAR SAAS FUND Director of Brand & Marketing 小林千尋 氏
ALLSTAR SAAS FUND 小林千尋 さん

─まずは「ALL STAR SAAS CONFERENCE 2023」において、デザインにより注力された理由を教えてください。

小林氏
私たちはここ数年、ブログなどを通じて積極的に情報発信をする中で、コンテンツにデザインがもたらすインパクトを実感していました。
その一環として開催するカンファレンスにおいても、ぜひこのインパクトを与えない手はないと思ったんです。

また、これまでの私たちのカンファレンスは、、黒いトーンにクールな感じのステージで……と、まるで決まったパターンがあるようにも感じており、それを壊したいと考えていました。

きっかけは、2021年にアメリカで開催された「SaaStr(サースター)」というカンファレンスに参加したこと。ビジネスがテーマとは思えないほど、音楽フェスのように明るく、楽しい雰囲気でした。「私たちのカンファレンスにも、こういった空間作りや演出を取り入れたい!」と。

そう願っていたのですが、カンファレンスを手掛けられるようなデザイナーのツテはなくて……そんな時に、たまたまオプサーを運営している多湖さんと久しぶりに会って、使ってみることにしたんです。

all star saas conference キービジュアル

─オプサーの第一印象はいかがでしたか?

小林氏
デザイナーのみなさんの実績を一覧でき、さらにカテゴリーで分かれているのも助かりました。中にはカンファレンスのデザインに携わった方もいらっしゃって、依頼候補を絞り込みやすかったですね。実際に3人まで候補を絞ったのですが、原さんもその一人です。

早速、候補となったデザイナーさんとミーティングをしてみると、「実績だけでなく、人としての相性も大切な要素なんだ」という気づきもありました。制作中はコミュニケーションを取り続けなければなりませんから。

─いわゆる「人となり」もデザインワークには欠かせません。オプサーとしては、それを「非デザインスキル」と呼んでいます。今後のバージョンアップで、そういった要素もより把握しやすくしようと考えています。原さんは、オプサーにどんな印象を持っていましたか?

原氏
こういったポートフォリオ掲載サービスの勧誘を受けることはありました。
ただ、営業代理のような形で制作実績をもとに受注があったとしても、それが良いマッチングにならないケースも多く、基本的に登録を断っていたんです。

オプサーは運営サイドとまずは仕事抜きで知り合いになった経緯もあったのですが、サービスとして提供する価値が明確で、透明性が高いと感じました。
信頼が置けたので、当時はベータ版でしたが、参加してみることにしました。

「やりたいこと」へ、共に歩めると良いプロジェクトになる

HYPHEN 原健三さん
HYPHEN 原健三さん

─ミーティングを経て、どういったタイムスパンで制作は進んでいきましたか。

小林氏
4月に始まり、カンファレンスは11月でしたから、約7ヶ月ほどが制作期間です。

原氏
僕らの仕事は平均4〜5ヶ月で終えることが多いので、長く時間をかけられたほうです。とはいえ、まずはSaaSの説明からしてもらったんでしたね(笑)。

小林氏
携わっていないとわかりにくいですから(笑)。
原さんのオフィスへ伺ったとき、これまでに手掛けたポップな製品があったり、オフィスの明るい雰囲気も見られたりして、自分たちの世界観とは全く違うのでワクワクしました!「私が思いもよらないようなものを叶えてくれるかも」と。

原氏
小林さんと話すと、そのまま発展していきそうなアイデアが多かったですし、目標がとても定まっているから進めやすかったです。
よくあるのが、アイデアを話しても拡散してしまって「本当にやりたいこと」を見失ってしまったり、そもそも「やりたいこと」の交通整理から始めなくてはならなかったりするケースです。

結局は、依頼側の「やりたいこと」が目標にあって、そのビジョンの実現のために一緒に進んでいけないと、どこか消化不良なプロジェクトになりやすいというのが僕の経験則です。

小林氏
原さんはミーティング後に、アイデアを7パターンくらい出してくださって。

原氏
平均的に5案以上は出すことが多いです。
そこから要素として拾えるところを使ってもらったり、さらに発展させたりして、もう一度ブラッシュアップする想定ですね。
今回は「変化できるようなグラフィック」と、イベントで起きる「交わり」の醸成という観点を一番のポイントに、ギミックでもインパクトを出せるように考えていきました。

ビジネスの現場でも、デザイン投資はより重視されている

ALLSTAR SAAS FUND 前田ヒロさん
ALLSTAR SAAS FUND 前田ヒロさん

─「ALL STAR SAAS CONFERENCE 2023」の大盛況を振り返って、デザインへ投資したことで得られた「価値」を考えると、どういったものが挙げられますか?

小林氏
この面白さやインパクトは、一度でも味わったら抜け出せないです。

前田氏
ウェブサイトや会場設計を褒めてくれるSNSのポストもよく見ましたね。
参加者からは「インタラクティブ性」の評価が多かったです。
トークセッションや交流はカンファレンスの大事な要素ですが、今回は「SaaS年表」といった展示物や、出展企業のブースを巡るとプレゼントがもらえる企画もあり、それ以外の楽しみ方も好評だったように思います。

(会場内には登壇者をイラストで表現したパネルや、SaaSに関する名言が散りばめらたフォトブースなど、さまざまな仕掛けが施された)

─普段、前田さんはスタートアップ企業と関わる投資家をされていますが、ぜひ「デザイン投資」という観点でお考えを聞かせてください。

前田氏
まず、ALL STAR SAAS FUNDとしての観点からいくと、VC業界は日本でも同業他社が増え、取り扱える資金も大きくなるにつれ、各VCがコモディティ化しています。
その状況でも差別化を図ろうとしたときにデザインは武器になりますし、僕たち自身が有言実行してその価値を取り入れることは、起業家や経営者に対しての説得力にもつながります。

僕らとしては起業家や経営者に「SaaSといえばALL STAR SAAS FUND」と想起してもらいたいですし、そもそも「ALL STAR SAAS FUNDそのものがSaaS企業のようだ」とも感じてもらいたい。
だからこそ、投資する資金だけでなく、コンテンツやアドバイスなどを通じて、常に優れたアウトプットを出すことをチーム全体で意識しています。

投資家は、よく投資先の企業へ「デザインは大事だ」「UXにも投資すべき」などと伝えることがありますが、やはり自身が体現していなければ、どこかアドバイスが軽くなってしまうと思うんです。
これは、僕らがデザインに投資する理由の一つといっていいでしょう。その意味では、ブランディングに対する投資の一種ともみなせます。

そして、デザイン投資を企業の観点から捉えると、テクノロジーが進化していく過程で、現在のようにSaaSが普及している理由は、「適切なタイミングで、適正な情報が見やすい」という強みがあるからだと考えています。
ツールやデバイスが増えていく中で、ユーザーが「見にくい」とストレスを感じれば、サービスから離れやすくなってしまう。デザイン投資への重要度は、必然的に増していくでしょう。

─実際に、海外事例も含めて、ビジネスの現場でもデザイン投資は重視されていますか?

前田氏
確実に加速していますね。
特に海外は機能性が共通しているプロダクトが乱立していますから、ユーザーから選ばれる基準が「使っていて気持ちが良い」や「見た目が好き」といった感性に訴える部分になることも多いです。
そうなると、良いデザイナーと組んで差別化することが欠かせません。こういった海外の流れは、日本にも当然来るでしょう。

成功事例として、Airbnbは創業メンバーにデザイナーがいました。
最近では共同創業メンバーにデザインセンスの高い人が加わる例も増えています。
この競争環境下においては、デザインの基準を一定超えてこないと普及しにくく、ビジネスの加速度にも影響してしまうのです。そう思うと、僕らの支援先はデザイン性が高い企業も比較的多いですね。

デザイナーがキュレーションされている場が持つ価値

all star saas conference カンファレンスホール正面

─実作者の立場から、原さんはどのようにデザイン投資を捉えますか。

原氏
「何十年と残るデザイン」といった話も聞きますが、僕はそれを真実ではないとも思っていて。
賞味期限でいえば5年くらいではないでしょうか。
さらに、コストをかければかけただけ良いものができるとも限りません。
その上で、企業はデザインを掛け捨てにするのではなく、形やイメージに残るものとして「資産化していく」という考えがあるといい。

10年ほど前、企業のリブランディングが流行しました。
ただ、それで無くなってしまった資産も相当量があったはずですが、リブランディングが済んだ後でないと「無くなった」とは気づけないのです。
まず一度は、企業が保有する「デザイン資産」を見つめなおして、無くすべきでないものを精査し、そこから先を考えていくのも同時に大切だと思います。

─おそらく「デザインによる成功体験」があると、企業も資産として捉えやすくなるのかもしれないと感じました。コストとみなしやすくならないように、良い体験を設計したり、経験できたりする環境をいかに整えられるのかも大切ですね。

原氏
決裁権がある方からすると、予算の範囲内で最も良い結果を出したいと考え、どうしてもわかりやすい数字を見ざるを得ないところもある。
数字の向上はデザインが関与できる部分ばかりでもないのですが、意外とデザインと向き合った方が本質的な解決策に近いケースもあります。
たとえば、単純な「クリック数」だけを指標とせず、「ユーザーが見た後に記憶として残った時間」を換算したほうが良いかもしれない。
最近は前者的な指標を見ることも増えていると思いますが、「デザインの価値」はそれだけに留まらないとも考えますね。

─ありがとうございます。オプサーとしても、そういった観点も大切に伝えていきたいです。ぜひ、さらにオプサーへ期待することがあれば、教えてください!

談笑するall star saas fund 前田ヒロさんと小林千尋さん

小林氏
今回は原さんとご一緒でき、ひたすらに積み上げ式で完成までたどり着けたのは、私としても助かりました。

クラウドで人材を探せるサービスはたくさんありますが、結局は「信用できるのか」という観点では不安から始まるものが多いですよね。
オプサーは実績をベースにしているのもあって、安心感からスタートできるのは明確に良いところです。
プロジェクトを進める上で、最もつらいのは時間も費用もロスしてしまう「手戻り」が起きること。
その意味では、手戻りの原因にもなりやすいので、依頼前に「非デザインスキル」がよりわかれば嬉しいですね。

前田氏
デザイナーに限らず、セールスでもエンジニアでも、職種ごとに「良し悪しの判断をどうすればよいのかわからない」という相談は、僕の元にもよく届きます。
セールスやエンジニアであれば面談の機会も多いのでアドバイスはできるのですが、比較するとデザイナーは経験数が少なく、僕もなかなか上手く伝えられないこともあります。

その点では、オプサーのように一定のレベル感を持つデザイナーがキュレーションされている場は、アドバイスを必要とせずとも、依頼側が失敗を避けやすいという意味においても価値があると思います。

選択肢が多ければ人は悩みますし、そもそも「自分で判断しなければならない」というのはコストなんです。
そこから解放されるだけでも価値がある。コストを下げながら、自分の感性や感度で絞り込める体験は、依頼側のストレスも軽減するでしょうね。


(聞き手:「オプサー」運営・ヒューリズム CEO 多湖大師/文・構成:長谷川賢人/写真」:有田亮平 ※会場写真はハイフンより提供)

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