
優秀な外部人材と「ハイブリッド組織」を構築するスタートアップの戦略 ― 株式会社Foodies Prime
菅井 貴志
食を通じて世界を繋ぐユニークなビジョンを掲げるスタートアップ「株式会社Foodies Prime」。グルメ特化型SNSアプリ「Foodies Prime」や人気飲食店予約サービスの「Foodies Reserve」を展開し、飲食業界に新たな風を吹き込んでいます。事業の立ち上げから現在に至るまで、一般的なスタートアップとは異なる組織体制、特に外部人材を積極的に活用する「ハイブリッド組織」を構築してきました。その戦略と、早期からのデザイン投資の重要性について、代表の菅井氏に伺いました。
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株式会社Foodies Prime 代表取締役 菅井 貴志
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世界中の”おいしい”をもっと身近に。
—まずは、貴社の事業内容とミッションについて教えてください。
菅井 氏 弊社のミッションは「世界中の”おいしい”をもっと身近に。」(Taste the world. Closer than ever.)を掲げています。事業内容としては、大きく分けて二つあります。一つ目がグルメ特化型SNSアプリの「Foodies Prime(通称フープラ)」で、もう一つが今年の1月末にローンチした飲食店の予約サービス「Foodies Reserve」です。この二つの事業を軸に展開しています。
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引用:https://www.foodies-prime.com/
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引用:https://www.foodies-reserve.com/ja
—Foodies Primeは、飲食業界のどのような課題を解決するために立ち上げられたのですか?
菅井 氏 飲食業界には様々な課題がありますが、我々がまず注目したのは人気飲食店の予約に関する課題でした。日本でも有数の人気店ともなると、予約は常連でさえ数ヶ月〜数年待ちが当たり前。そんな希少な予約でも、前日や当日に同席予定者が来られなくなることは、一定の確率で起こりえます。
これまでは、FacebookやInstagram、LINEなどのグループチャットを使って、「明日来られる人いませんか?」といった投稿を一斉に複数グループで流し、興味を持ってもらった人に対して個別に連絡を取るという、非効率なコミュニケーションが多く発生していました。
そこまでして同席者を探す背景には、飲食店と予約者との関係性、食材ロス、料理人や生産者への配慮、キャンセル料の負担、などの事情があり、席が空いたら埋めるということは、人気飲食店の予約者の中では暗黙のルールとなっています。一方、席を埋める相手が誰でも良いわけではなく、「気の合う人と食事をしたい」という本質的なニーズも無視できません。
このような課題を解決すべく、Foodies Primeという完全招待制のグルメSNSアプリを立ち上げました。
—Foodies Primeでそれらの課題をどのように解決できますか?
菅井 氏 Foodies Primeができる前は、各SNSのグループチャットで、それぞれ数百名程度の規模がほとんどでした。Foodies Primeは現在会員数が1万人を超えており、母数が多いことから食事会の募集を出すと多くの応募が集まるため、無理なく気の合う方を同席者として選ぶことが今までより簡単になります。
アプリ内ではプロフィール文、SNSリンク、紹介コメント、過去の食事会参加履歴、フォロー関係なども確認できるため、匿名のグループチャットよりも人物像が明確になります。さらに、素行の悪いユーザーに対しては要注意・要警戒といったペナルティ機能も実装されており、食事会マナーの担保にもつながっています。
飲食店にとっても、当日キャンセルや欠員による空席リスクを軽減できる点は大きなメリットです。たとえキャンセルポリシーによりコース料金が回収できたとしても、ドリンクなど当日の追加注文による売上機会の損失や、仕入れた食材のロスは避けられません。
Foodies Primeを通じて空いた席を迅速に埋めることで、こうした損失を最小限に抑えるだけでなく、以前からその飲食店に行きたかった新規顧客の獲得につながる可能性もあります。
—事業の着想は、菅井さんご自身の体験に基づいているのでしょうか、それとも業界で広く言われていた課題だったのでしょうか?
菅井 氏 私自身が人気飲食店に長く通っていた経験が大きいです。自分が解像度を高く捉えられている業界で、さらに自分が感じていた課題にフォーカスして事業を検討しました。検討初期ではLINEグループを作り、そこで反響を確認したり、LINEグループだけでは解決できない課題などを考えながら、現在のFoodies Primeを作っていったという流れです。
事業立ち上げ初期から「業務委託」中心で組織を構築した理由
—スタートアップとして事業立ち上げの初期段階について伺います。初期から正社員ではなく業務委託の方を多く採用されていたのですか?
菅井 氏 はい。少し変則的ですが、この会社を立ち上げた直後から、私以外のボードメンバーも全て業務委託の雇用形態です。私以外に、COO、CTO、他にエンジニアが3名、そしてアートディレクターが1名という体制でした。アートディレクターに関しては、オプサーを通じて採用させていただきました。
—なぜ初期から業務委託中心の組織を選ばれたのですか?スタートアップだと正社員がいないと資金調達が難しいのでは、といった見方もあるかと思いますが。
菅井 氏 私自身、Foodies Primeを立ち上げる前の事業で、10年近くプロジェクトベースで外部の方と組む人材紹介やコンサルティング事業を手がけていました。その経験から、チーム構成において業務委託であることに特に違和感がありませんでした。雇用形態よりも、人材の人柄、コミットメント、信頼性の高さの方が重要だと考えていたので、正社員かどうかについてはあまり気にしていませんでした。アーリーフェーズの投資家からも、シリーズが進むまでは事業が伸びているなら雇用形態は関係ない、という見方でしたね。特に弊社の初期メンバーは、COOもCTOもエンジニアも、それぞれ自分で事業をされているような代表クラスの方々でした。そういった非常に優秀な方々をゼロからフルコミットで正社員雇用するのはかなりハードルが高い。であれば、特にアーリーフェーズにおいて、雇用形態にこだわらず稼働率も必ずしも100%に限定しない形で、最も優秀な人材を集めてチームを組むのが最適だと判断していました。
—デザイン、特にアートディレクターのようなポジションは、スタートアップの初期で採用するのは難しかったですか?
菅井 氏 探し始めた初期段階でオプサーさんを知ったので、結果として大々的に募集をかけることはなかったのですが、感触としては、立ち上げにコミットできるアートディレクターを採用するのは非常に難しいと感じます。特に事業の状況に応じて幅広くデザインに対応でき、アーリーフェーズでコミットして頂ける方はかなり稀有な存在だと感じています。
早期からのデザイン投資がもたらしたもの、そして外部人材活用の秘訣
—早期からデザインに投資し、専門家を入れられたことで、良かったと感じる点はありますか?特にスタートアップの視点から。
菅井 氏 デザインは機能と違って直接的な成果が見えづらく、後回しにされたり優先度が下がったりしがちだと思います。一度失敗してデザインの重要性に気づく、というケースも多いのではないでしょうか。良かった点としては、まず開発において作り直しが発生しなかったこと。これはコストを余分にかけない上で非常に重要です。
デザインは表面的な見せ方だと思われがちですが、安易に進めると後から非常に大変なことになります。スタートアップで作り直しが発生しているケースも時々見かけますし、デザインが原因で負債になることはすごくあると感じます。早期にしっかりとデザイン投資をすることで、後々の大きな手戻りや負債を防ぐことができている点を踏まえると、最初から投資しておいて良かったと感じています。

—外部人材をうまく活用するための秘訣や、仕組み上の工夫はありますか?
菅井 氏 外部人材に対しては、やることを明確に決め、適切な指示を出すことが重要です。フルコミットに近い形でエクイティを持っているボードメンバーと同じ目線での議論や進行は、モチベーションの源泉が違うので、無理があります。彼らはその道のスペシャリスト、プロとして、こういう役割でこれをやって欲しい、という期待値を明確に伝えることが非常に重要だと考えています。
—外部の開発会社や制作会社などに発注するのではなく、業務委託という形でチームへ迎え入れることのメリットはありますか?
菅井 氏 柔軟性の高さが違うと感じます。外部発注だと見積もりや工数計算が発生し、変更に対応しづらい。業務委託であれば日々変わる事業環境においても、比較的柔軟に対応してもらいやすいですし、事務的な工数をカットできます。ただすべてを内製化にこだわっているわけではなく、Foodies PrimeやFoodies Reserveといったプロダクト開発やそれらに伴うデザインは内部(業務委託含むコアメンバー)で完結させ、飲食店様向けのLP制作など、完全に切り離せる部分は外部の制作会社に委託することもあります。
—そういった体制を構築する上で、社内に最低限必要な人材はいますか?
菅井 氏 はい、少なくとも内部でコントロールできる人材は必要だと感じています。例えば、外部の制作会社にLP制作を発注する際も、内部に一人アートディレクターがいることで、外部のマネジメントができます。これは非常に重要だと思います。
ハイブリッド組織の今後と、スタートアップにおけるPM力の重要性
—今後、事業をさらに拡大していく上で、人材採用の方向性はどのように考えていますか?外部と内部の使い分けについて教えてください。
菅井 氏 基本的には、前述のLP制作の話に近い形で、正社員・業務委託双方で、必要に応じて採用を進めていくというスタンスです。必ず正社員、必ず業務委託、ということではなく、状況に合わせて最適な人材を採用していくイメージです。ただし、ボードメンバーやある程度権限移譲してまるっと任せるようなポジションに関しては、外部よりも内部の方が安全だと感覚的に思っています。
—スタートアップが外部人材と内部人材をハイブリッドで活用する上で、最も重要になるのはどのような点だとお考えですか?
菅井 氏 最も重要なのはPM力(プロジェクトマネジメント力)だと思います。ボードメンバーであれ、マネージャーであれ、PM力が高ければ、内部のオペレーションも組めるし、要件をまとめて外部に渡すこともできる。要件定義の中で、自発的に動いていける仕組みさえ作れると思います。ただ、PMが特定領域(例えばデザイン)の専門知識を持っていない場合は、その分野でマネジメントができる人材(内部か外部のリードポジション)を置いて、PMをサポートする必要があると考えています。特定領域でマネジメントができる人を配置すれば、それ以外のメンバーに関しては内部か外部かはどちらでも良い、という感覚です。
食文化を通じて世界を繋ぐ未来へ
—最後に、今後のチャレンジについて教えてください。
菅井 氏 Foodies Primeは現在は日本語対応のアプリですが、今後海外のフーディーの利用も視野に入れて、グルメ特化のバーティカルSNSとしてグローバル展開を目指していきます。Foodies Reserveは、まずは日本国内の飲食店を対象としていますが、中長期的にはこちらも世界中の飲食店をターゲットとして考えています。

世の中に飲食店予約サービスは数多くありますが、食事会管理や同席者同士のメッセージ機能まで取り揃えているサービスは他にはありません。我々はグルメコミュニティという軸を武器に、「世界中の”おいしい”をもっと身近に。」感じられる体験を今後も増やしていきます。
—本日は貴重なお話をありがとうございました。
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