
イベントレポート<シカケ人に聴く#1> 選ばれるブランドの作り方 - 株式会社CRAZY 林 隆三
株式会社CRAZY, 林 隆三 / 株式会社ヒューリズム, 川田 哲平 / 株式会社アマナ, 櫻井 ノマド
2026年4月8日(水)、武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパスの共創拠点「Co-Creation Space Ma」にて、トーク&ネットワーキングイベント「シカケ人に聴く#1:選ばれるブランドの作り方」が開催されました。
技術の進歩や情報の広がりによって、サービスやプロダクトが以前よりも似たものになりやすい現代。同じような商品が並ぶ市場の中で、あるブランドが強く記憶に残り、選ばれ続ける「差」を生み出しているのは「人」であり、物事の捉え方や行動の仕方、つまり「仕掛け方」にあるのではないか。本イベントは、そんな仕掛け方を実践しているゲストをお招きし、その思考や裏側を紐解くトークセッションです。
第1回のゲストには、株式会社CRAZY 執行役員 / クリエイティブディレクターの林隆三氏をお迎えし、株式会社アマナの櫻井ノマド氏、株式会社ヒューリズムの川田哲平のモデレートのもと、同社のブランドづくりの裏側に迫りました。
スピーカー

林 隆三 氏
株式会社CRAZY / 執行役員・クリエイティブディレクター
建築設計事務所、インテリアデザイン会社を経て、目的ではなく手段としてのクリエイティブで、
意味と可能性のある本質的な事業やブランドでの価値発揮をしたいと思い、2013年よりCRAZYに参画。
創業時から外部アートディレクターとして携わり、CRAZY WEDDINGの空間や数々のイベントの演出を手掛ける。
チーフアートディレクターとしてプロジェクトを担当しつつ、業務管理、採用、育成などのマネジメントを行い、アートチームを組織化する。2017年よりクリエイティブディレクターを務め、2019年に執行役員就任。2020年にはクリエイティブ室を発足し、自社ブランディング、事業開発などを担う。
モデレーター

川田 哲平
株式会社ヒューリズム / Marketing Manager
大学在学中にバーチャルタレント事業を立ち上げ、卒業後はGMO NIKKOにて運用型広告のコンサルティングや新規事業の立ち上げを経験。
2023年にヒューリズムへ一号社員として参画。本質的なクリエイティブ制作を実現するため、経験豊富なクリエイターと企業が最短距離で繋がるサービス「オプサー」を運営。現在はセールス・マーケティング・プロダクト開発を横断し事業開発を推進。

櫻井 ノマド
株式会社アマナ /クリエイティブディレクター ・コピーライター
言葉を起点に、企画立案からディレクション、制作までを一貫して手がける。
CM、OOH、新聞、イベント、キャンペーン、SNSなど、メディアを横断したPR発想のコミュニケーション設計を得意とする。
商品や企業のプロモーションをはじめ、地域活性化プロジェクトまで、幅広い領域で企画・制作に従事。メディア掲載や広告賞も多数受賞。
センスや印象をどう設計するか。ブランディングの源泉を探る
セッションの冒頭、モデレーターの川田と櫻井氏から本イベントのテーマである「ブランディング」についての捉え方が語られました。
「技術や知識の広まりでサービスが似てくる中で、差分となる『ブランディング』が非常に大事になってきます。ブランディングとは、人で言うと『あの人センスいいよね』という感覚に似ていると普段から感じています。髪型や服など要素を分解すればたくさんあるのに、ビシッとひとことでは言語化しづらい。幾重にも要素が重なり合って、『このブランドは自分に合うな』といった人に与える印象や認知を設計していくのがブランディングだと思っています」
「私たちも制作の仕事をする中で、ブランディングを意識したクリエイティブを作りたいと考えますが、ただ綺麗に作ればいいのか、どうしたらいいのかが明確にならないケースも多い。だからこそ、その源泉を探るために、世の中に仕掛けている人たちの考えをインストールしたいと思い、この企画を立ち上げました」と、本イベントの趣旨が共有されました。
「パートナーシップの分断を解消する」CRAZYの事業展開
続いて、ゲストの林氏より、株式会社CRAZYの具体的な事業内容について紹介が行われました。同社は「私たちは人々が愛し合うための機会と勇気を提供し、パートナーシップの分断を解消します」というパーパスを掲げています。
主軸となるのは、創業時からの基幹事業である「CRAZY WEDDING」です。「人生のための結婚式」をコンセプトに、時代に合わせて形を変えながら、主に以下の4つのサービスを展開しています。
- IWAI OMOTESANDO:表参道にある結婚式場で、口コミサイトで4年連続1位を獲得する圧倒的な支持を集めている。
- CRAZY GRANDE MAISON:新たに横浜市みなとみらいに開業したレストラン。レストランウェディングの提供もスタート。
- Marine Tower Wedding:かつての灯台であった商業施設マリンタワー内の結婚式場を事業承継し、リニューアルオープン。
- CRAZY ANNIVERSARY:CRAZYで結婚式を挙げたご夫婦向けに、宿泊施設「SANU」と提携し、毎年の記念日により関係性を深めるための対話コンテンツなどを提供する宿泊サービス。
さらに、ウェディング(個人の節目)に留まらず、法人向けに企業の節目をプロデュースしたり組織開発を行う「CRAZY CULTURE AGENCY」や、人生の重要な転換期である転職に伴走するエージェント事業「CRAZY CAREER」など、あらゆるパートナーシップの分断を解消するための多角的な事業展開が行われていることが語られました。

「結婚式は奇跡を起こせる」という事業価値の捉え方
話題は、レッドオーシャンとも言えるウェディング業界において、CRAZYが「選ばれるための工夫やこだわり」へと移ります。林氏は、事業者が自らの事業価値をどう捉えるかが非常に重要であると指摘します。
「CRAZYでは、『結婚式は奇跡を起こせる』と事業価値を定義しています。自然発生的な奇跡が起きるのを待つのではなく、意図的に『起こせる』ということです。寡黙なお父さんが思いっきり泣いたり、兄弟間のわだかまりが解けたり、初めて集まった80人が最後に輪になって歌っているようなシーンが、私たちの結婚式場では日常的に起きています」
その奇跡が起きる理由として林氏が挙げたのが、「2人の人生に深く関与する」という姿勢です。
「結婚式に参列して泣いてしまうのは、自分の人生を重ねているからです。大切な親友の姿を見ながら自分の親を重ねたり、自分の大切な記憶を投影しながら思わず感動している。新郎新婦だけでなく、参列する方たちにとっても重要な経験になります。私たち提供者も、そのレベルで人生に関与し、それを生きがいだと感じる人間たちが集まって水準を保ち続けています」
マーケットインの発想で「失敗しない安全なオペレーション」を重視しがちな業界において、実現したいビジョン(プロダクトアウト)で突き進むことで、結婚式というものを「再定義」し、結果として人々から圧倒的に選ばれるブランドが生み出されていることが明かされました。
BtoEtoCモデル:社員の熱量こそがブランドの源泉
他の多くのウェディングブランドが「人生最高の1日」を謳う中で、CRAZYにはなぜ他社にはない「本気感」が滲み出ているのか。櫻井氏からの問いに対し、林氏は「模倣されにくい価値」の核心について語りました。
「空間デザインなどの『場所』や『コンテンツ』は、すぐに真似されてしまいます。しかし、『人』は真似できません。能力やスキルはもちろんですが、その人が持つエネルギーや熱量、思いはコピーが非常に難しいのです。だからこそ、私たちは人に対してクリエイティブのアプローチを含めた取り組みをしています」
そして、林氏はCRAZYの特異なビジネスモデルを「BtoEtoC(Business to Employee to Consumer)」と表現しました。
「私たちのビジネスやブランドは、まず社員(E)にアプローチしています。社員がブランドの価値を自ら生み出せる状態をデザインすることが大切です。お客様は、このEを通してブランドを見るわけです。だからこそ、社員は単なる人的リソースではなく、ブランド価値の『ソース(源泉)』なのです」
この言葉を裏付けるように、CRAZYでは週1回3時間をかけて社員同士が感情を交換し合う全社会や、2年に1回の全社員キャンプ、さらには入社時に全社員の前で自分の人生をプレゼンする場など、人間的な成長を後押しする独自の組織開発プログラムが実施されていることが紹介されました。
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クリエイティブが果たす「社員の認識と行動を変える」役割
組織開発と事業成長を結びつける上で、CRAZYにおけるクリエイティブの役割とは何なのか。林氏は、「クリエイティブは、社員の認知と行動を変えるための装置である」と明言します。
「社員の認識が変わり、行動が変われば、顧客体験の質が変わります。顧客体験の質が上がれば、お客様の感情が動き、満足度が高まり、口コミや紹介が生まれてブランドが強化される。この一連の循環を生み出すのがクリエイティブです」
CRAZYでは、パーパスやバリューといった「思想・言語」から、「体験・儀式」「空間・ツール」「物語発信」に至るまで、徹底的にクリエイティブが作り込まれています。
「例えば、『いい夫婦の日』には、『私たちがパートナーを大切にしないで誰が体現するんだ!』という社員の提案から、実際に全社員でパートナーのための休業を実行しました。また、営業チームが使う資料も、『営業資料ではなく、IWAI OMOTESANDOの空気を持ち帰ってもらうためのものにしよう』と対話を重ねて作ります。『共有しているという空気感』を全身で体験できる仕組みが、強固なブランドを作っています」
さらに、社内でクリエイティブを制作する際は、全社員にオリエンテーションの作法を共有し、「息を合わせる」ことを重視していると語りました。「私には作れないから作ってほしい」ではなく「私が作りたい」という当事者意識を生み出し、社員一人ひとりがブランドの作り手となっていくプロセスが明かされました。
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ラップアップ:時代の変化の中で「変わらないもの」にアンカーを下ろす
セッションの最後、モデレーターの川田から「明日から仕掛けていくためのアドバイス」を求められた林氏は、次のようなメッセージを贈りました。
「時代が動きすぎている今、自分が本当に大事なものは何なのかを突き詰めていく必要があると思います。今、漠然と大事だと思っているものも、本当にそうなのかと前提を疑ってみる。変わるものがたくさんある中で、変わらないものもあるはずです。その『変わらないもの』にちゃんとアンカーを下ろしてあげることで、流されすぎず、幸せに生きていけるのではないでしょうか」
セッション終了後は、登壇者と参加者が直接言葉を交わす懇親会へと移行し、盛況のうちにイベントは幕を閉じました。
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